かえるくん!!

絵本つれづれ

みなさん「かえるくん」シリーズはごぞんじでしょうか?

オランダを代表する絵本作家マックス・ベルジェイス描くかえるくんは、独特のおもしろさを持ったシリーズです。
その特徴は、なんというかぼくたちがふとした瞬間にかんじる、ことばにならないような感情をゆっくりと描き出しているところにあると思います。

たとえばシリーズの一冊『かえるくんはかなしい』は、
「その日のあさ かえるくんは かなしいきもちで 目が さめました・・・・・・」という出だしではじりまります。

かなしいきもちのかえるくんは、いまにもなきだしそうです。
(でもかえるくんにはそれがどうしてだか、自分ではわかりません)
そんなかえるくんをみて、ともだちは、いろんなことで楽しませようとがんばります。
でもかえるくんはかなしいままです。
とうとうともだちのねずみはバイオリンをかえるくんのためにひいてあげます。
とてもきれいな曲を・・・
するとかえるくんは、曲をきいたとたん泣き出してしまったのです!!

・・・そして、そのあとのいろんなともだちとの素敵なやりとりのすえ、結局大笑いに笑ったかえるくんのおはなしは、こんなセリフでおわります。

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「だいすきなかえるくん。またげんきになってくれてよかった。でも、さっきはどうしてあんなにかなしそうだったの?」

「さあ、どうしてだろ。ただね、そんなときもあるんだよ」

かえるくんはにっこりわらってこたました。

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こんなことってあるよなぁ・・・説明のつかない、根拠のない感情におおわれてしまうこと・・・と、ベルジェイスの作品を読むといつも思います。そして、子どもの頃の、そんな根拠のないうれしさやかなしみの気持ちのままで、 空や、雲や、道路やいろんなものを眺めていたことを思い出しそうになります。 

きっと感情や気持ちに理由などいらなかった子ども時代。そんな子ども時代を、そっと静かに描くベルジェイスの作品は、もっとみんなに読まれたらいいナと思っています。


『かえるくんはかなしい』
マックス・ベルジェイス/作
清水奈緒子/訳
セーラー出版/刊
1,365円(税込)