そうげん

絵本作家さん

先日、ふらりとお店にやってきたのは小野明さん。
そのユーモアと知性と真剣さが同居した文章からにじみ出る絵本への熱烈な愛情。絵本の企画・編集・デザインなどで幅広く活躍され絵本ワークショップ「あとさき塾」などで多くの絵本作家を育てたり・・・その多岐に渡る活動などを尊敬してるので、小野さんがお店にいらっしゃるとうれしくなってしまいます。

小野さんの文章はとにかく絵本への愛情があふれているうえに刺激たっぷりなので本当に好きなのですが、とくに長新太さんに関する文章は大好きです。

もう去年の話ですが雑誌「飛ぶ教室2006年秋号」の中に書かれた小野明さんの文章
~「こんな」人の『そうげん』について~も本当にスリリングで面白かったです。

内容は、なんとあの長新太さんの『ちへいせんのみえるところ』と相似形の絵本『そうげん』が存在していた!!というお話です。(ページをめくるたびに添えられているのはあの『ちへいせん~』の逆で「でません」ということばらしいですよー。なんてすごい。)

『ちへいせん~』と同時発売される予定だったけど、結局出版に至らなかったのは、そのすばらしすぎるナンセンスさゆえでしょうか?

あまりにもこの原稿が好きだったので小野明さんがいらっしゃったときに、
「とてもたのしく読ませていただきました。いちどでもいいからみたかったです」

と伝えたところ、小野さんはいつもの穏かな笑顔で「すみません」とひとことおっしゃいました。不思議なトーンでひとこと「すみません」と。

いまあの「すみません」の意味をぼんやりと考えています。

あの 「すみません」の意味はなんだったんだのでしょうか?

(意味もなくとっさにでた挨拶的なことばとしての)「すみません」

(自分だけが長さんの未発表の絵本を楽しんで)「すみません」

いろいろ考えられるますが、おそらく長新太さんの絵本を愛してやまない小野明さんのことだから、あの「すみません」は「(このような絵本を出版できなくて編集者として)すみません・・・」だったような気がします。

「飛ぶ教室」の文章の最後を、
~『そうげん』だって、子どもに受け渡すことのできる、まぎれもない傑作であると、私はほんきで思う~

と、しめくるる小野さんのことですから。

ネット上で読める小野明さんの絵本紹介もありますよ!(世界各地の代表的な絵本を紹介しています)
http://www.bel-japon.com/library/book/vol09-prof.html

飛ぶ教室2006年秋号
「飛ぶ教室2006年秋号」
光村図書/刊
1,000円(税込)
ちへいせんのみえるところ
『ちへいせんのみえるところ』
長新太/作
ビリケン出版/刊
1,680円(税込)